第3回 世界チャンピオンより音楽はエライ!
競技会ではダンス音楽を選手が選ぶことはできません。かかった音楽が絶対条件なので、どの選手にとっても公平ということになり、世界チャンピオンと言えども音楽を無視することはできません。
時折、ノリの悪い曲がかかる場合があっても、上手なダンサーが踊ると良い曲に聞こえてしまうのがなんとも不思議。おそらく、彼らの踊りが曲をカバーするほど音楽的なのかも知れません。
そして音楽的要素の中で最も大切なのが“タイミング”です。タイミングが良いとか悪いとか日常生活でもよく使いますよね。上手くいかない場合、ちょっとしたタイミングのズレを調整するだけで、物事がスムーズに進行するなどということは、皆さんにも充分経験があると思います。
ダンスの場合、曲とパートナーと自分の3要素のタイミングをどのように合わせるかということが大切なのは言うまでもありませんが、これが実にムズカシイ。もちろん正確なテクニックの習熟は必要ですが、身体というハードの面をいくらトレーニングしてもタイミングという目に見えないソフトの面を無視しては、決して上手く踊れません。
息が合うって日本語でよく使いますが、呼吸するということはとっても大事なことですよね。人間、3日間水なしでも生きられるっていうし、一週間食べなくても生きられるそうですが、3分間息をしなければ、死んでしまいますよね。美味しい水、美味しい食事には、必要以上に執着する反面、呼吸に関してはかなり無頓着ですよね。また、スキがあるという言葉がありますが、息を吐いて吸うときと、吸って吐くときに、すなわち呼吸の切り替わりのときに攻撃されると、人間何も出来なくなるのでこのことをスキというのだそうです。
また、蹴ったり殴ったりするときに、息を吸いながらではできません。試しに吸いながら蹴ってみてください。なんと弱々しいことか・・・。今度は吐きながら、やってみてください。エイッ!とかハァッ!とか言いながらやると、力が出ますよね。つまり、力を溜めるときは吸って、力を出すときは吐くということなのです。
踊るときも、このことを利用してトレーニングしてみてください。上手くいかないステップのときほど、お互いの呼吸を合わせてみるのです。では音楽をどうとらえればよいか?楽器を演奏するのは呼吸している人間です。複数の楽器があれば、複数の異なる呼吸をする人間が演奏していることになります。ですからそこにハーモニーが生まれて、例えばワルツなら、1、2、3という3拍子の大きな呼吸の流れができると考えればいいのです。
次回は具体的にどのように呼吸すればよいかお話したいと思います。答えは決してひとつではありません。皆さんも考えてみて下さい。
藤本明彦
(2008年8月16日更新)