第42回 利き目
最近、目が悪くなってきました。
もともと母親譲りで子供の頃は両目とも1.5の視力がありましたが、現在は1.0くらいだと思います。辞書のような小さい文字が読みづらく遠いものは見やすいので、これって遠視の始まりなのでしょうか。スタジオで、裸眼で仕事しているのは自分だけで、パートナーもスタッフも全員コンタクトを着用しています。
ところで踊るとき、皆さんはどこを見て踊っているでしょう?ダンスは360°に回転して動くので、どこか固定したところを見ているわけにはいきません。
目の役割は3つあります。ひとつは表現。踊りによって喜怒哀楽を表現するために役立ちます。ふたつ目は、踊って行く方向を確認することです。
みっつ目はバランスです。
片足で立って目をつぶったら倒れそうになりますが、足底と目の2点で姿勢を制御している証拠ですよね。
スタンダードで相手と組むとき、よく昔から“互いに左を向いて”などと教わった経験がおありの方も多いと思いますが、正しくは互いに正面を向いて組むのが基本です。自分が教えるとき、相手のヒジから肩にかけてのスペースをテレビ画面に見立てて、自分がいつも画面の中央に主人公のように顔を向けていなさいとアドバイスします。無理に顔を左に向けると背骨にねじりが生じ不自然な組み方になるからです。
ある時、男性の顔が右に入るクセのあるA級選手が、「P.P.のとき、左目で左方向を見ると右に入らないような気がします!」と言ったので、ナルホド、利き目が右目の場合、右目で左方向を見ると、頭が右に傾くことに気付きました。皆さんも試してみるとわかると思いますが、どちらの目で進行方向を見ているでしょうか?自分でも利き手、利き足、利き尻は意識していましたが、利き目のことはまさに目からウロコのようでした。
また、左右の目の中央に「第3の目」をイメージすることも良いアイディアです。どちらかの目を頼りにすると、バランスに微妙な影響を与えると考えられるからです。
そしてP.P.の時、男性は左を向きますが、真左を見てはいけません。特に男性は女性を右でホールドしている関係で、右に寄ってしまう、俗に言う“右に重なった”状態になりかねません。顔を左に回すのではなく、顎を相手のセンターに向けて第3の目で進行方向を見ます。
また、P.P.の時、注意するのは、男性の左足は「横」にステップするということです。目の方向にステップすると、左足が前進方向に動いてしまい、女性の右足のステップを妨害してしまいます。
その結果、左足は横ではなく後ろにステップするように感じる人もいると思います。
いずれにしても、利き目を頼りにするのではなく、反対の目や第3の目を意識して練習してみると、自分の頭の角度や組み方、バランス等のクセを治すことができるかもしれません。
是非、試してください。
藤本明彦
(2011年10月31日更新)