第7回 これでいいのか、ダンス界!
スケーティングシステムの限界を感じた統一全日本選手権
今年も11月3日、新高輪プリンス飛天の間で統一全日本が開催されました。観客席は立見券まで含めて即日完売になるほどの注目の競技会です。
プロ3団体がこの日ばかりは協力し合い、真の日本一のダンサーを決める日とあって、あの広大な飛天の間が狭く感じられるほど、会場は熱気に包まれていました。
審査員は各団体から3名ずつ、スタンダード、ラテンそれぞれ9名のジャッジパネルです。
各団体とも自分の所属選手に良い成績をとってもらいたいと思うのは仕方のないところで、各審査員がどれだけ公正にジャッジするかも見どころの一つ。
自分も昨年、審査員を経験しましたが、自己の信念に基づいて審査することの苦しさは少なからずありました。
上手い選手を見分けるだけでよいではないかと思われるようですが、どうしても、無意識のうちにまず3団体にカテゴライズしてフロアー上の選手を見てしまいます。
そして、自分は色分けしていないだろうかと自問自答しながら、限られた時間内で審査していくのです。
自分のような弱い人間にとってこれは大変困難な作業でした。
一番緊張するのは、決勝戦後の旗上げ。
どの選手に何位をつけたか、各審査員が全てのオーディエンスに向けて公表する場面です。
今回も例年通り、ピーンと張り詰めた会場で司会が早口に順位を読み上げますが、パッと見ただけでは、何位になったかまったくわかりません。
それほど順位が割れており、1位をつけるジャッジもいれば6位をつけるジャッジもいて、過半数の順位を取る選手がいないのです。
当然、観客だってよくわからないものだから、ザワザワしているだけで、時折り、拍手とか、「エ~ッ?」とか聞こえるだけで、会場はシラけたムードになりました。
後で、順位結果を精査したところ、やはり、各団体ごとの色分けが浮かび上がってきたことは、否定できません。
ここで一つはっきり言っておかなければならないのは、誰々審査員が良い悪いというつもりはありません。
全員、ルールに従って審査しているので、問題はないはずです。
だから、いいではないか、また来年みんなでチカラを合わせて運営すればいいよネ、めでたし、めでたし・・・
本当にそうでしょうか?
観客は明らかにシラけていました。
我々は、“やっぱりね。いつものことだよ”とあきらめているのではないでしょうか?これは統一全日本に限った問題ではありません。
現在、ダンス界では競技結果を出すためにスケーティングシステムを使っていますが、これは単に結果を計算する方式で、決してジャッジシステムではありません。
様々な外的要因に影響されず、限りなく純粋に踊りに対する評価を反映させることができるシステムこそジャッジシステムと呼ぶべきであって、個人の主観があまりに多い現在の審査基準を改め、定期的な審査員の研修等に組織として取り組まなければならない時期が来ているのではないでしょうか。
ダンスは勝敗がたいへんわかりづらい競技です。
そもそも踊りはある面、芸術的な要素を持っており、それをバラつきのある審査結果の理由にしてしまっているところがありはしないでしょうか。
なぜ自分がこんなにも審査方法にこだわるかと言えば、単に、採点管理部のメンバーだからというだけではなく、競技ダンスをもっと盛んにしたい思いが強いからです。そのためには、選手、コーチ、観客が、解釈でき、納得できる競技方法、審査方法が絶対不可欠だと信じているからです。
日本のある団体はすでにフィギュアスケートの採点方式を参考にして、フィールドテストを始めていると聞きます。
我々プロ、特にJBDFも、21世紀のダンス界の構築や、オリンピックを目指すのであれば、それに見合った採点方法の早急な改革を実行する必要があると考えます。
うつわだけ整えても、中身が伴わなければ意味がありませんからね。
藤本明彦
(2008年12月16日更新)