第9回 ♂「重いんだよ!」 ♀「お互い様よ!」
軽くて丈夫なものが重宝される時代なので、「重い」は、概して良い意味で使われることが少なくなってきました。荷物は軽いほうがいいし、体重だって少ないほうが楽だし、燃費の良し悪しも重さと関係してきます。
ロンドンで生活していたときに気づいたことですが、トビラ類は概ね重い。特に店舗の場合、防犯上の理由もあるでしょうが、日本のように、自動ドアだったり、片手で簡単に開くようなドアは少なく、例えば、子供やお年寄りも利用するマクドナルドに入店するのでさえ、ずっしり重たかったりします。
またスーパーマーケットのカートも、日本だったら、片手でヒョイヒョイ向きを変えられるけれど、ロンドンのカートはそうは簡単に、動いてくれません。
でもどちらの場合でも、下半身と体重を利用すれば、トビラを開けたり、カートを動かすのは簡単になります。重いことが良い悪いは別にして、自分の下半身と体重を利用する生活が日常的であり、子供の頃から身体を使うことが自然に身についてくると考えられるのです。日本は、ちょっと触れただけで使えてしまうものが多すぎ、スイッチ類など節度感が少ないため、スイッチを入れたり切ったりした感覚が体に残らず、入れ忘れ・切り忘れといったこともおこってくると思われます。
自分は毎朝、カミソリでウェットシェービングをしますが、適度な重さのシェーバーのほうが断然剃りやすいのです。ホテルの備品にあるようなプラスチックの軽いシェーバーだと無駄な力が入ってしまい、カミソリ負けになってしまいます。
道具の重さを利用するということは、ダンスで言えば、相手の体重を利用することに他なりません。カップル間のケンカの火種にもなるこの「重さ」をどう味方につけるか、ここにボールルームダンスのテクニックが必要とされてきます。
トップクラスのダンサーは、ソロでできないことをカップルでならできると考え、実現できるのです。そのためには「体重」を味方にしなければいけません。 では、悪い「重さ」とはどういうことでしょうか?
1、互いに進む方向が違う
2、タイミングが合わない
3、関節が硬い
4、反応が鈍い
:
99、やる気がない
100、絶対的に重い
もし、100の条件があったとしたら、99や100以前に様々な原因があることを忘れてはいけません。カップルによってその原因・症状が違うので、分からなくなったらプロに相談してください。いっしょに悩んで解決していこうとするプロこそ、あなたにとってのメインコーチャーになるはずです。
藤本明彦
(2009年1月31日更新)