第49回 審査方法は変わらざるを得ないのか?
第46回のコラムで、日本インターナショナルダンス選手権のNHK放映が中止になった経緯を書きました。その理由の一つである「審査方法が分かりづらい」ということを踏まえて、いよいよ全国審査委員会が動き出しました。
来年のセグエ選手権の審査基準を大幅に改定するというもので、現在その規定作りを大急ぎで行っているところです。
ここで現行の審査方法を説明すると、一組ずつの踊りを技術点と芸術点に分けて5.0から6.0まで0.1きざみで採点し、その合計点の高い組から順位を決定していくやり方で、同点が出た場合だけ、スケーティングシステムで順位を確定していきます。つまり、絶対評価で採点し、同点の時だけ相対評価で決着をつけるというシステムとして、長年にわたり運用され、完成されたシステムとなってきました。
全選手の演技終了後、採点用紙を回収し、点検後コンピューターで読み込み、結果がプリントアウトされるまで約10分。会場では表彰式の準備をしているので、司会から発表があるまでは合計15~20分くらいかかってしまい、採点計算に時間がかかっていると思っている方が多くいるようですが、我々採点管理部としては最速で結果を出しているのに大変残念です。
ところで、審査方法を分かりやすくするというのは、具体的にどのようにすればよいのでしょうか。
よく例に取り上げられるのはフィギュアスケートの審査ですが、2回転、3回転によって点数が変わり、着氷の失敗によって減点されるといったことを流用しようというものです。しかし、ボールルームダンスは滑るのではなくステップするわけですから、その一歩一歩をすべてチェックするのは不可能であり、敢えて踊り崩すことで表現することだってあるわけです。
特にセグエ選手権は、芸術性を求められるので、それを可視化することは容易ではありません。それでもジャッジがどのような点で評価しているのかを少しでも分かりやすくファンの方に理解してもらうために、運動性・音楽性といった4~5つの評価軸でもって採点をし、一組ずつ、演技終了後に即、結果を場内にアナウンスする方法はできないものか検討しているところです。
ベーシックだけならば採点しやすいでしょうが、いろいろな踊り方がある中で、ひとつふたつのモノサシで計ることは、ボールルームダンスには向いていないように思います。
ダンスの魅力は、説明できない部分が沢山あります。その魅力と、審査の可視化の狭間で、最終的にどのような審査基準になるか、また皆さんにこのコラムでもお知らせしたいと考えています。
(2012年5月31日更新)