第59回 採点結果を即時発表した今年のセグエ選手権
今年のスーパージャパンカップセグエ選手権の採点表示が変更になったのは来場された方ならご存知でしょう。1組毎の演技終了後に技術点をプラカード型のプレートに表示していく方法を新たに取り入れました。フィギュアスケートのように点数を即時発表することで、観客がより楽しくわかりやすく観戦できるようにといった目的のためです。
昨年の秋頃に検討委員会を立ち上げましたが、そのキッカケは、日本インターのNHK放送が中止になったことでした。
中止の理由の1つに、審査方法がわかりづらいというものがあり、放送再開に向けてわかりやすい審査方法とは何かといったことが議論されるようになりました。
即時発表するためには、絶対評価という審査をしなければなりません。
我々は通常、他の選手との比較の中で順位ををつけるスケーティングシステムという相対評価の審査をしています。複数の審査員の評価の平均値を算出するという非常によく出来たシステムで、ダンスの競技は昔からこの方法で順位を決定してきました。
しかし、1組毎に即時発表するためには、絶対評価が出来なければなりません。
そこで今回は、選手の場当たりや演出のチェックのために行われていた開催前日の公式リハーサル時に、演技を審査員に見せることになりました。それによって本番ですぐ点数を審査員が決定することができるようになりますが、問題点が2つありました。
1つは実質的に本番が2回となり、選手の負担が増えたこと。もう1つは、審査員の拘束時間がもう1日増えた事です。
なんだそんなことかと思われる方も多いと思いますが、限られた予算と時間の中でこのような前日準備をすることは大変なことでした。芸術点は即時発表の点数に含まれないということで芸術点担当審査員は前日リハーサルには同席しません。
ここで少し説明しておきますが、セグエの審査は、9名の技術点担当審査員と、9名の芸術点担当審査員に分かれていて、芸術点担当はさらに5名のダンス界の審査員と、4名のダンス界以外の、例えば体操や振り付けの第一線の先生方で構成されています。
芸術点の審査を即時発表に加えないのは、ダンス界以外の先生方の都合を考えた上なのが正直な理由です。
しかし、かえって最終審査結果が発表にならない限り、順位はわからないので、期待感が表彰式まで継続するといった効果も合わせ持つことになりました。
公式リハーサルで注意しなければならない点はもう1つ、リハーサル後、審査員は演技内容について一切口外してはならないということです。これは、審査委員会より各審査員に徹底するようお願いすることになりました。
我々、採点管理部の重要な仕事は、演技終了後、1~2分以内に結果を計算し、表示するということでした。ジャッジペーパーを早く回収し、エクセルに手動で打ち込み、最上点・最下点をカットして集計する作業をミスなく手際よく行わなければなりません。何より、会場の雰囲気を台無しにしてしまうのは、発表までに時間がかかり過ぎてしまうことだからです。
そのエクセル打ち込みのリハーサルも、公式リハーサル時に何度も練習しました。1分前後で結果が出せるようになりましたが、いざ本番、何が起きるかわかりません。P.Cがシステムダウンしたりしないことを祈るばかりです。
さて本番は、思った以上に予定通りトラブル無く全て進行しました。その点では今回の方法は大成功でした。
ただ、今後の問題点として解決しなければならないことがあります。
審査員は絶対評価で審査できたのかということと、多くの方が42点満点の表示に違和感を覚えた事です。
今年からJBDFは審査および採点システムの改良に乗り出す予定です。ダンスというものをどのように評価すべきなのかという根本的な問題を考えなければいけません。ダンスは芸術なのかスポーツなのか、そういった議論が大変に重要になってきています。この議論を避けてはシステムの開発・改良ができないからです。
審査を数字にどう置き換えたらよいか、どなたか良いアイディアがあったら是非教えてください。
(2013年4月1日更新)