第62回 什の掟(審査員編)
1、審査員同士、選手の批評をしてはならぬ
2、プログラムを見てはならぬ
3、選手とは挨拶以外言葉を交わしてはならぬ
4、携帯・スマホを使ってはならぬ
5、競技結果を見に行ってはならぬ
6、欠番にマークしてはならぬ
7、規定数以外マークしてはならぬ
ならぬものはならぬものです。
今年のNHK大河ドラマ「八重の桜」をご覧になっている方ならお分かりと思いますが、古くから会津藩に伝わる藩士の子弟が守るべきルールとして定められたのが什の掟です。
私たち審査員には、半期毎に審査依頼の連絡がありますが、競技会の日を指定されるだけで、どのセクションを担当するかは分からないようになっています。
一週間前になると集合時間の通知があるので、そこで初めてどのセクションを担当するかが分かります。
前日は体調を整えるため、暴飲暴食は控えます。セクションによっては1次予選で2時間以上の審査をすることも多いので、審査員と言えども体調管理をしっかりしておかないと競技の進行に迷惑をかけることになります。 以前に、審査中に貧血で倒れた審査員もいます。
当日は、什の掟のようなことを注意して厳正な審査をすることを要求される、孤独な仕事です。
審査員は自分の信念に基づいて審査するので、たとえ優勝する選手でも6位だと思えば6位をつけていいので、すべての審査員の平均を出すためにスケーティングシステムを採用しています。
しかし、現在、そのスケーティングシステムでよいのかという議論も行っています。
踊りの表現として敢えて基本を崩したりして踊ることもあるので、体操競技のようなルールを作るのが難しく、なかなか議論が進みません。「ピカソとルノアールのどちらが上手か?」と問われても、好みの問題になってしまうのと同じです。
一方で、観客から審査基準がわかりづらいという指摘もあり、何らかの改善を必要としていることは確かです。
審査員は審査という権力を持っていることを肝に銘じ、審査する目を養うべく、ダンスを勉強していくことが最も大切なことだと思います。
(2013年7月1日更新)