第14回 肩甲骨を利用しよう!
人間はおよそ200コの骨と500コ(枚)の筋肉で出来ています。成人の骨の数は約206コ。新生児の時の約350コの骨が成長とともに融合していくため、個人によって数は異なるらしい。赤ちゃんがクニャクニャと柔らかいのは、こんなことも理由の一つかもしれません。年とともに身体は硬くなり、最期は本当に硬くなって一生を終えるわけで、身体を柔らかに保つことが寿命を延ばすことにつながると言えるでしょう。
ところで、これ程多くのパーツが組み合わされて出来ている身体をコントロールするのは容易ではありません。しかも、ダンスはパートナーと一緒に動く訳だからパーツは単純に倍の計算になります。自分自身をイメージどおり動かすのでさえむずかしいのに、パートナーを思いどおりに動かそうとすること自体、無理なわけですから、ケンカが絶えないのです(笑)
時計は、どんなに小さな歯車一つでも止まったら、針は動きません。幸いなことに人間はマシーンではないので、運動が止まることはありませんが、動きは明らかに鈍くなります。腕を振らないで歩いたり走ったりすることは大変ですよね。
スタンダードの場合、ホールドを保ちながら動くわけですから、腕を固定したまま足を動かす。非常に矛盾しています。トップダンサーはホールドが美しいですが、実はものすごく動いている。外見では分からないので話がややこしい。
そこで腕の付け根がどこか考えてみましょう。骨格的に見れば、胸骨と鎖骨の連結部分である胸鎖関節から始まっています。ノドの下のくぼんだところですね。一方で肩甲骨という手の平程の大きさのある骨が、体幹と結びついていますが、ここは筋肉だけでつながっているので、腕をグルグルと回すことができるほど、可動域が大きい。逆に言えば不安定な状態なので、ホールドをするときに無意識のうちに固めてしまいやすいところなのです。そうすると、先ほどお話しましたように、あるパーツが止まると他のパーツの動きは鈍くなるので、安定させながら動きを止めないようにするという矛盾を超えなければならないのです。ですから、肩甲骨は微妙に動くようにしておかなければいけません。
生徒さんをレッスンするとき、背中をマッサージしてあげることがありますが、実は肩甲骨まわりの筋肉をほぐしているのです。そうすると別人のように踊りが軽くなる。生徒さんも肩が楽になって踊りやすいと一石二鳥になります。マッサージするときにひとつコツがあります。背中と肩甲骨をつなげている深層筋の一つである菱形筋をほぐしてあげるのです。俗に肩甲骨はがしといって、そこに少し痛いくらい指を差し入れ、肩甲骨をはがすように揉んであげます。腕を後ろ手に組んで、ボコッと突き出たところが肩甲骨の境目ですので、そこを目安にするといいでしょう。ぜひ試してみてください。ホールドすることが楽しくなるくらい軽くなるはずです。人は直立歩行する以前は4つ脚動物だったわけですから、私たちの腕も前脚としての機能があったわけです。お互いに前脚をつなぐ気持ちでホールドする。そして後脚でしっかりステップする。そうすることによって、 固まったホールドから使えるホールドに意識が変わるはずです。
肩甲骨をケンコウに保って滑らかに踊りましょう!
藤本明彦
(2009年6月16日更新)