第15回 表現力を養うヒント
以前、音楽は世界チャンピオンより偉いとこのコラムで述べましたが、音楽を身体で表現するのがダンサーである以上、表現力を養うのは大変重要なことです。すべてのテクニックは、音楽を表現するための手段であると言っても過言ではありません。男性がドラムに反応し、女性がピアノに反応して踊ると、そこにハーモニーが表現されます。下半身はベースで、上半身はヴァイオリンかも知れない。ボディーがトランペットで頭がクラリネットかも知れない。複数の楽器を身体のパーツ毎に感じられれば、そこに身体のオーケストラが表現されるということになります。
一般的に黄色人種より白人、白人より黒人の方が音を身体で感じる能力が高いと言われています。 故マイケル・ジャクソンが超一流のエンターテナーなのはずば抜けて音楽を身体で表現できたからに他なりません。しかし音楽を身体で表現しろと言っても、一般的にはむずかしいので、別の視点から言い換えてみましょう。
よく、スタンダード5種目をどのように踊り分けたらよいかと聞かれることかあります。音色という言葉のように音には色があるようです。ではスタンダード5種目を色分けしてみてください。ヒントは、自分がデモを踊った時、何色のスポットライトを浴びたいかということです。ほとんどの人が、ワルツは白、タンゴは赤、フォックストロットは青、クイックステップは黄、ヴェニーズワルツはピンクと答えるでしょう。
ではワルツの白から何を連想できるでしょう?清純・優雅・花嫁・雲・・・ タンゴの赤からは、情熱・血・怒り・激しさ・・・ 何でもかまいません。自分の想像力の許す限り、たくさんのものを連想できることは、表現力を養うための第一歩です。これらをイメージして、5種目を踊り分けてください。
~五感に訴える踊り~
視覚 ドレスが美しい、ヘアスタイルがカッコイイ・・・
触角 触ったらやわらかそう、硬そう、冷たそう・・・
聴覚 音楽性
嗅覚 甘い香り、スパイシーな香り、がしそう・・・
味覚 食べたら美味しそう、苦そう、甘そう・・・
素敵なドレスを身にまとい、また、ドレスの質感に凝り、香水をつけ、笑顔(悲しい顔?)で踊るよう努力しますよね。コンペまたはデモで、審査員や観客に認めてもらうためには、五感に訴えることを心掛けるべきでしょう。踊りとは様々な要素が総合的にからみ合ったものです。例えば、どんなに動きが良くても、うす汚れたドレスで、硬そうに踊り、汗くさくて、苦しそうに踊っているダンサーは良い評価を得ることができないでしょう。逆に踊りがヘタでも、五感に訴えることを大切にしているカップルは、心構えがしっかりしていて、好評価を得る確率が高くなるはずです。どんなに美しくお化粧をしていても、ダンスシューズが練習シューズのように汚れていたらダメなのです。そういう意味で、ドレスやシューズが直接審査対象でなくても、イメージを損う要素は表現力にとってマイナスになるということをよくよく心掛けるべきです。
藤本明彦
(2009年7月16日更新)