第66回 審査方法
ダンスの審査方法の議論を1年以上続けている委員会があります。自分もそのメンバーの一員ですが、発端はTV放映中止の理由のひとつに、審査内容が不明確であるといったことがあります。
決勝戦である選手に1位を挙げるジャッジもいれば6位を挙げるジャッジもいる、それは一体どういうことか、といったことのようです。
そこで私たちは体操競技やフィギュアスケートのように点数に置き換える方法を検討してきました。つまりデジタル処理をするということです。世の中は今すべてデジタル化の方向に進んでいます。
数字というものは客観性があり、誰でも同じように扱うことができ、ウソをつかないと思われています。
ベーシックフィガーはフットワーク・タイミング・回転量等、細かく規定されているので、ベーシック競技であれば点数化することは可能であると考えました。
しかし、バリエーションはその応用なので、必ずしも規定どおりに踊る必要はありません。そこに踊り手としての個性が表現できる余地があるからです。
ピカソとルノアールのどちらの絵が上手かといったことに私達は答えることはできない、といった話にもなりました。
また、点数をつけるということは絶対評価をするということであって、何をもって満点とするかといった議論になり、仮に満点が出たとするならば、この先、それ以上のものは生まれない、ということをも意味します。
現在、私達はスケーティングシステムで決勝戦を審査しています。複数の相対評価の審査結果を平均順位として算出するこの方法は、英国で開発され約60年の歴史を持っています。すべては、民主的に過半数の原理が優先されるしくみになっています。
一方、「これでいいのかダンス界」というコラムを第7回に掲載しました。統一全日本の政治的ニオイのする結果にもの申した内容です。確かに一部の不誠実な審査に対してスケーティングシステムが対応不可能であることは事実です。だからといって、スケーティングシステムが不完全であるという話にはなりません。
審査員の教育と、審査システムのあり方は、分けて考える必要があるでしょう。
審査方法を巡る議論は決して終わったわけではありません。これを機に、ダンスはこの先どのような方向へ進んで行くのか、また進むべきなのかという議論が必要になっていくことだけは確かだと思います。
話変わって、本の宣伝です。
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(2013年11月1日更新)