第20回 「厚み」
新年あけましておめでとうございます。コラムの連載も今回で20回目を迎え、読んでいただいた方から、“今回はムズカシカッタ”とか“ダンスは奥が深いですね”という感想を多くいただくようになってきました。扱うテーマが身体意識なので、文章で表現するとやや難解になりがちになってしまいますが、出来るだけわかりやすい言葉を使うよう心掛けてまいります。
今回のテーマは「厚み」。体の前後を意識しようということです。体の左右上下は視覚的にわかりやすいのでが、体の厚みとなると、ピンと来ない人が多いかも知れません。コンタクトして踊ると、どうしても体の前面に強い意識が働いてしまい、自分の背中、相手の背中の動きを忘れてしまいがちになります。例えば男性が前進ステップする場合、自分の背中から始まった動きは、自分の前面を通り、相手の前面に伝わって、最後は相手の背中に達するのです。自分の動きは瞬時に相手に伝わると考えがちですが、実は時間がかかっているのであって、言い換えれば時差が生じているわけです。自分の背中の動きが相手の背中に達するまでの時間が短ければ短いほど、瞬時に動いてもブレが少なくなるということです。切れの良い素早い動きをするのには、とても大切な要素であって、優雅な動きを表現するには、逆に時間差を長くすることによって動きに幅を持たせるテクニックを使う事ができます。
相手の動きが重いと感じるときは、体の前面だけがフォローしていて、背中のフォローが遅れている場合が多い。元世界チャンピオンが、「自分の前面の動きは相手の背中の動きである」と言っていましたが、まさにこの事でしょう。
別の例で言えば、ドレスを手に持つと重いが、着てしまえば重さは感じなくなる。体にフィットすればするほど軽くなるのと同じで、相手の体を着てしまうつもりで組めたら軽く動けるわけです。そのためにはどうすれば良いかといえば、まず体のアソビを取り払うことです。体は、コントロールしなければホントに怠けもので、ほっておくとどんどんムダな動きをする。ムダな動きを排除してシンプルな動きを心掛けるようにする。そういう観点で練習していくと、何がムダで何が必要な動きか見えてくるのです。
背骨や首をしっかり伸ばし、ホールドを張るということは単純なことのようであって、実はとても大切なテクニックなのです。体を使って踊るということの意味がわからないと、ムダな動きをして踊った気分になってしまう。ここの辺が一番わかりづらく教えてわかるものでもないのです。
次回はさらに具体的に話を進めてまいります。皆さんしっかりついてきてくださいね!
藤本明彦
(2009年12月16日更新)