第21回 側軸と前後軸
体を中心軸だけでなく左軸と右軸に分けて考えるナンバ的発想は今や当たり前のようになってきました。魚を3枚におろすように、自分の体を3枚におろすことをイメージしてみる。背骨の際から左の切身、右の切身というように考えれば、お尻だって仙骨を境にして左尻、右尻(読み方はサジリ、ウジリと読むとオモシロイと思います)と分けて使ってみてください。座っておシリ歩きをすれば、お尻も左右に分かれていることが実感できるはずです。このように考えると体のパーツは全て左右に分けることができます。自分と一緒にナンバを研究している中井信一先生に言わせると、「頭だって左右に分けて使うべきだ」ということになります。
見方を変えて、今度は体を前後に分けてみる。体の中心軸(横から見た場合、背骨の前側を通っている)を境に前後にこれまた3枚におろす。パートナーと組んだとき、前後に6枚、言い換えれば6つの層ができあがるわけです。層という表現のほうが、厚みとか幅、距離というイメージが湧きやすいのではないでしょうか。
※ちょうど、人ひとり分の幅になります。
リーダーの立場からすると、自分の動きがパートナーに即伝わって欲しいと思うわけです。ナチュラルターンをするとき、男性の前進運動が女性の後退運動をさせるわけですが、先ほどの6つの層を伝わって初めて、一体となった動きになるのです。そこには前後の距離があって時間差が存在します。リーダーが動き出したとき、パートナーはまだ動いていない。リーダーの背中の層が動き始めてもその動きがパートナーの背中の層の動きに到達するまで、コンマ数秒の時間がかかっているということを計算に入れて動き始めなければなりません。
パートナーの背中の動きが音楽に合って初めてオンタイムなのであって、リーダーはそのぶん、早めに動きだす必要があるのです。タイミングが早い遅いというのはこのことであって、動作の速い遅いとは区別して考えて欲しいのです。曲に遅れる原因がタイミングの遅れということに気付かずに、アクションを速くしようとして、よく言われる「忙しい踊り」になってしまうことが非常に多く見られます。
大抵の場合、相手が重いとか曲が速すぎるとかいって、CDのテンポを遅くしたりしますが、実は原因はそんなことではないんですね。
体を左右前後に使い分けてひと安心!?あっ、まだ上下が残っていましたね。
藤本明彦
(2010年1月16日更新)