第27回 選手や審査員にも理解して欲しい採点管理の裏側
コンペシーズンも一段落。シーズンオフとはいえ、競技選手にとっては様々なイベントで休む暇もありません。秋からの競技シーズンを前に、今回は私が所属するJBDF東部総局の採点管理の舞台裏をお話ししましょう。
一番忙しいコンペは選手が多く2面フロアーで9セクション、採点方法の異なるセグエを含めたスーパージャパンカップのような競技会です。採点用紙を集計している間に別のセクションの採点用紙を準備し、司会・進行・選手係用の帳票を印刷するのですが、ラウンドが進んでいくにつれて、タイムテーブルどおりに処理していくことが厳しくなってきます。ちょっとした手順の間違いで大幅に競技進行に影響を与える可能性が多く、部員は皆、緊張した面持ちで黙々と仕事をこなしています。
4台あるP.C.には前もって競技の全ての情報をインプットしておくわけですが、これが一つでも違うと設定のやり直しになるわけです。最も重要な情報の一つに、欠番登録という作業がありますが、欠場した選手の背番号を正しくインプットしていないとジャッジペーパーに印刷されてしまい、審査ミスを招くことになりかねません。ご存知の方も少ないと思いますが、2度、欠番に誤ってマークしてしまうと、即刻、半年間の審査停止処分が待っています。免停みたいなものですね。これは審査員にとって大変不名誉なもので、1年のうちに多いときで2~3人処分を受けることがあります。
例えば、Wは踊ったけれど、ケガをしてしまいTで棄権した選手がいたとします。ジャッジペーパーにはその情報が反映されていないので、審査員はしっかりと踊っている選手を見てマークしなければなりませんが、落とす選手を選んで、残りの背番号をマークしようものなら、棄権した選手までマークしてしまう可能性が大きいのです。
これも欠番にマークしたことになるので、当たり前なことですが、審査員は踊っている選手をしっかり確認した上でマークする必要があるのです。予選は1曲が1分15秒から30秒くらいなので、1組の踊りを見てマークする時間は、平均5秒程度しかありません。予選毎に決められた数をマークしなければならないので、見た目以上にハードな仕事をしているのが審査員なのです。
回収したジャッジペーパーが正しくマークされているかをチェックするのも採点管理の重要な仕事です。しっかりマークされていないとマークシートリーダーが読み取れないだけでなく、私達部員がジャッジペーパーに修正をいれなければなりません。審査員にしっかりマークするよう常々お願いしているのは、修正する労力を惜しんでいるのではなく、そもそもジャッジペーパーには出来るだけ手を加えたくないのです。エンピツと消しゴムでいくらでも修正可能ということは、故意に改ざんすることも可能ということになるからです。
様々な手順を経てようやく通過番号表とチェック表が貼り出され、選手達は一喜一憂しますが、選手も自分の背番号を見落としたりして次ラウンドに出遅れることもよくあり、進行に影響が出てしまいます。
いまだに、ペーパーに頼った採点をしている競技というものは、これだけ通信技術の発達した世の中で、時代遅れと言わざるを得ません。それと同時に、スケーティングシステムのあり方を含めたより良いジャッジシステムの模索をする必要があると思います。選手・審査員・観客の3本柱を尊重した競技スタイルを議論する場が欲しいと自分は考えています。
採点シート
藤本明彦
(2010年8月1日更新)