第29回 東京スターグランプリ
9月12日、後楽園ホールで「国際親善東京スターグランプリ選手権」が開催されました。この日の目玉はなんといっても世界チャンプのミルコ組、マリトースキー組が参戦するということで、チケットもほぼ完売だったようです。
後楽園ホールと言えば、ダンスの殿堂、ここで昇級し、全国大会へ出場するための登竜門とあって外人のトップクラスが踊ることはめったにありません。そんな場所で世界チャンプがどのように踊るか、多くのファンの関心を呼んだに違いありません。彼らの踊りは、武道館やパーティー会場で何度も見ているにもかかわらず、なぜこんなにも人気を呼ぶのでしょうか?我々がいつも戦場としているホールでどのように踊るのか、決して踊りやすいとは言えない四角いフロアーでどのように踊り抜けていくのか、皆、興味があったに違いありません。
自分は残念ながら地方の競技会の審査のために観戦することができませんでしたが、後日、ビデオテープでその模様をみることができました。自分が一番関心があったのは、ミルコ組のフロアークラフトでした。他の組と何度かぶつかりながらも、エンジンの出力を落とさず、ベーシックステップを織り交ぜながら、華やかに踊り抜けていく姿は、さすがトップクラスだと思いました。百戦錬磨のミルコ組はどんな会場にもすぐ適応できるすぐれたテクニックの持ち主であることが証明されたように思います。
ミルコのように踊ってもあなたは勝てない
コンペの翌日、スターグランプリのセミファイナル以上に勝ち残った選手を対象に練習会が行われました。講師はミルコ組とマリトースキー組。ここではミルコ組の話をしましょう。
彼らの踊りのスタイルや、コーチの方法は、多くの選手からすでに聞いていましたが、この日もミルコスタイルが炸裂したようでした。彼らはとにかくトップを大きく広く見せることを一番に考え、男女の組み方も腰の一点でガッチリ噛み合わせるもので、我々がずうっとトレーニングしていたロングコンタクトを根底から覆すものだったようです。このような踊り方をするためには、強靭な体幹と、お互いにぶれずにtowardする正確なテクニックが不可欠になってきます。鍛えられたベーシックがあってこそ可能であって、見よう見真似で踊れば、バックバランスになり、腰痛になる危険性があります。型破りな彼らの踊りを目指しても、ほとんどの場合型崩れな踊りになり下がってしまうことでしょう。
ミルコ風ダンサーの増殖
学習は真似ることから始まります。いろいろな型や公式、ルールを身に付けることは、大変重要なことで、そこから初めて応用が効いてくる。型を知ってこそ型破りであり、オリジナリティが生まれてくるのです。
インド風カレー、中華風ソバ、和風懐石などという「風」は誰も本物だと思わず、ただそれっぽいだけだとすぐ分かります。どんなに真似ても所詮、本物を超えることはできません。最近の選手は皆、同じ様に見えて仕方ありません。踊りにも流行というものがあると思いますが、もっとオリジナリティ溢れるダンサーが生まれてきていいように感じます。全審査員から満点をもらえなくても、観客を感動させられるダンサー、魂を込めて踊る闘魂ダンサーを目指して欲しいと思います。
藤本明彦
(2010年10月16日更新)