第34回 THE NAMBA3 予備歩についての考察
ワルツのナチュラルターンの男性左足予備歩をステップする時、どのように踏み出しているでしょう?教科書には載っていないステップですので、なんとなく勢いを付ける、助走をするイメージでしょうか?また、音楽に合わせるためにリズムをとる必要もあるでしょう。
数年前、日本インターナショナルダンス選手権の決勝の規定フィガーがワルツで、初めのステップはナチュラルターンでした。決勝7カップルの中で、唯一、ミルコ組だけが予備歩をせず、男性右足(カウント1)からステップしたのです!彼らにとっては、規定フィガー通り踊っただけですが、実際やってみるとわかりますが、予備歩をステップせずナチュラルターンをするのは難しいことがわかります。しかしミルコは実に涼しげに伸びやかなナチュラルターンをやってのけ、当然ながら1位になりました。
当時世界チャンピオン、現2位ミルコ・ゴッゾーリと
当時のパートナー、アレッシア・ベティ組
男性の軸足・左足と女性の軸足・右足、そして体幹とアームを見事にハーモニーさせて踊り出さなければ、静止状態からカウント1をステップするのは難しいので、慣例的に予備歩は許容されているということだと思います。
ところで、ナチュラルターンは右回転をしなければならないので、教科書にはカウント1でCBMを使うように書かれています。このCBMの感覚は大変重要ですが、誤った使い方をすることが多いので注意することが必要です。これについてはまた後日、説明することにします。
ダンスは通常、直前のステップの終わりが次のステップの入り口というか、運動エネルギーの溜めになるように踊りますが、踊り始めには直前のステップがないので、何かそれに代わるアクションが必要となります。それが、一つには予備歩だったりするわけですが、静止状態から予備歩のたった一歩で、パワフルなナチュラルターンをすることは大変難しい。
そこで、からだのローテーションを使うことになるのですが、誤った動きをするとかえってバランスを崩すことになります。バックスイングをイメージして(正確にはテイクバック、バットやラケットを振るときに一度、後ろに引く動作のこと)男性左足予備歩をステップするときに、左ボディサイドを後ろに引く動作の必要性を感じます。しかしながら体幹をねじることでパートナーの軸が自分の軸に重なってしまい、バランスが極めて悪くなってしまうのです。
そこで有効な方法の一つが、予備歩を壁斜めではなくLODに向かってステップすることです。そして次のカウント1 の右足を壁斜めに向かって踏み出すことで約45°の差ができることになり、テイクバックしたときに近いエネルギーで、しかも互いの軸を重ねることなくナチュラルターンに入っていけるのです。
予備歩の規定は教科書には載っていないのですが、なんとなく思い込みで、壁斜めに向かってステップしている人が多いのではないでしょうか?最初は慣れないかもしれませんが、繰り返し練習してみてください。きっとその有効性を実感できると思います。
藤本明彦
(2011年3月1日更新)