第37回 ノリのセンス
今回のコラムが掲載される頃は、ブラックプールの大会の真っ最中になりますが、是非とも日本選手にがんばってもらいたいと思います。
先日、プロスタンダードC級競技会が後楽園ホールで行われました。当スタジオからも2組が出場し、1組が準決勝まで勝ち進むことができました。
C級戦というと、ベテランC級選手 vs 新鋭C級選手の戦いの様相も見えて、なかなか面白い競技会だと思います。
そんな中、見慣れない1組の外人カップルがいました。なんでも2週間前にD級になったばかりのロシア人カップルということで初めて目にしました。女性は以前、日本人と組んでいた経験のあるパートナーなので見覚えがあります。
踊りはというと、男女の頭の位置が近く(おそらく、他のC級選手の中で一番と言っていいくらい)上半身が棒立ちの状態でシルエットが美しいとはとても言い難いカップルですが、何故か目を引くものを持っているので、つい見てしまうのです。外人だからという意識を排除しても目に入ってきてしまう。これって何だろうと思い、他の日本人カップルと見比べてみると、よっぽど日本人の方が、トップを広くして、大きく動いているのです。
そしてこの外人カップルは、あれよあれよといううちに決勝まで勝ち進み、なんと4位になってしまったのです。
この違いは、一言で言うと、彼らは”踊っていて”、日本人は”動いている”ということではないかと思うのです。音楽を体で感じて踊っているので、タイミングが良い。タイミングが良いから踊っているとも言える。
外人だってヘタクソなのがいっぱいいるわけで、彼らのセンスが良いのかもしれない。いずれにしても、日本人にもっとも欠けている要素を見せつけられたような気がしました。
タイミングが良いというのは、簡単に言えばノリが良いということで、これは、ダンサーにとって最も重要なセンスに違いありませんよね。日本人はきっちり音に合わせて踊る。これは決して悪いことではないけれど、おもしろくないのです。カラオケを正しく(・・・)歌っても感動しないのと同じですよね。これって教えてわかるものじゃないので、やれ音楽より早いとか遅いとか指摘する中で、本人が気づいていかなければならないのです。
体には音楽を感じる部分があって、黒人が一番多く、次に白人、一番少ないのが黄色人種だという話を以前聞いたことがあります。
耳で聞いて足で踊るのではなく、体に音楽が通った踊り方をトレーニングする必要があります。
藤本明彦
(2011年6月16日更新)